緑内障について

1.緑内障とは

緑内障はありふれた病気で、日本では40歳以上の20人に1人が緑内障とされており、日本人の失明原因の第1位です。問題は、約9割は診断を受けていない潜在患者さんであるということです。緑内障であることに気づかないまま症状が進み、失明することもあります。緑内障は年齢と共に有病率もあがる病気なので、近年の高齢化に伴い、患者さんはさらに急増している可能性があります。

緑内障になると眼圧の影響で視神経が傷んで徐々に減っていき、視野が周辺から欠けていきます。恐ろしいのは、緑内障による視野障害は自覚症状に乏しいことです。視野が欠損していても、緑内障になっていない方の目や、脳が視野を補完してくれるため、欠損部は黒く見えず、片目が失明寸前でも気づかないこともあります。


【参考文献】Hoste AM. Bull Soc Belge Ophthalmol.2003;(287):65-71

傷んだ視神経や視野は元には戻りません。だからこそ、早期発見が非常に重要な疾患であり、見つけるためには眼科検診しかありません。実際に、きちんと治療されている緑内障患者さんのほとんどは失明には至っていません。緑内障は早期発見すれば怖くない病気ですから、一にも二にも、眼科検診を受けて頂きたいと思います。


2.緑内障の検査

当院では、眼圧検査、視野検査、眼底検査といった一般的な検査に加え、最新の光干渉断層計(OCT)を用いた検査もおこなっています。OCTとは、非侵襲的に眼底に弱い赤外光を当て、その反射を解析することで網膜の断層画像を得ることができる器械です。従来の検査では発見困難であった微細な変化をとらえることが可能で、緑内障によって障害された視神経線維層と細胞層の異常をより早期に発見できます。視野検査で異常が出ていないごく早期の緑内障も発見できるため、積極的に検査を行っています。

OCTで視野が欠ける前に発見された緑内障。
緑内障により薄くなった網膜が赤く表示されています

眼圧検査には、空気眼圧計、ゴールドマン眼圧計、アイケア®といった複数の眼圧計があり、個々に合わせて最も信頼できる方法で眼圧測定を行っています。
視野はハンフリー視野検査により、視野障害の状態や、進行速度を判定します。


3.緑内障の治療

緑内障は眼圧を十分に下降させることによって多くの症例の進行を抑制できることがわかっています。しかしながら、治療を行っても障害された視力、視野が改善することは困難で、治療の目標は残っている視機能の維持にあります。

薬物治療

治療開始時には、まず眼圧を測り、患者さんの進行の速さや年齢なども考慮して、眼圧をここまで下げるという目標値を決めます。目薬は通常、1種類から始めて、目標眼圧まで下がり、進行が止まれば、そのまま続けます。眼圧下降が不十分なら薬を変えたり、2種類以上に増やしたりして、状態に応じて治療していきます。

目薬には多くの種類があり、副作用など気になるものがあれば、早めに主治医に相談して下さい。また、薬の効果を引き出し、副作用を軽減するためにも、正しい点眼方法を身につけましょう。点眼前にはよく手を洗い、容器の先が目や指に触れないようにさします。量は1回1滴で充分です。点眼後は、出来ればまばたきをせずに1~2分間、静かに目を閉じて目頭を軽く押さえます。目の周りにこぼれた液は、洗い流すか拭き取ります。複数の目薬を使っているときは、点眼の間隔を5分以上あけましょう。

手術治療

緑内障治療の基本は目薬ですが、眼圧がしっかり下がらない場合や、眼圧が下がっても視野障害が進行する場合には、レーザー治療や手術療法を検討します。

当院で行っている「SLT」というレーザー治療は、眼内のお水の出口である「線維柱帯」という部分にレーザーを当てて、水の流れを改善して眼圧を下げるものです。治療時間も10分程度と短く、体への負担はありません。

手術療法も、初期から中期の方に対しては、最近では「MIGS」と呼ばれる体への負担の小さい手術が登場してきました。当院では微細なかぎ針(マイクロフック)で線維柱帯を切開する手術を行っています。効果は比較的マイルドですが、重篤な合併症が少ないとされています。中期以降の方には、「線維柱帯切除術」という、眼外へ水を排出する経路を新たに作成する手術を行います。眼圧下降効果は強く確実ですが、術後に視力が下がりやすく、合併症の発生率が切開術と比べると高いことが難点です。
現在当院では内藤、三木の専門医2名で手術を行っており、患者さんの病型、進行状況に合わせて最も適切な治療を心がけております。気になることなどありましたら、ご相談いただければと思います。

緑内障手術についてご質問・ご相談がございましたら、お気軽にお尋ね下さい。

要予約086-227-2626